クラフトレーベルFATの
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object of FAT
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by
Kouhei Ichiyama

 
  fragment of materials/素材の欠片たち 16  sus304の表面  
     
  島根に行く   
 



DOZE BOARD

林野庁長官賞(最優秀賞)

「居眠りするための板」

■松江に行った。初めての山陰、新幹線で岡山まで行き在来線で向かう。こんなに電車に揺られたのは何年ぶりだろうか。霧雨のグレーな世界が広がる山間を抜け、日本海を目にした。山陰という響きにふさわしい光景だ。タクシーで松江城の堀や小泉八雲邸など代官屋敷の町並みを迂回してもらいながら、島根県立美術館に向う。目の前に広がる宍道湖の、緩やかな稜線にとけ込むような美しい建築だ。ここに来たのは、「第1回合板1枚コンペ」の表彰式のためだ。■コンペには興味のなかった私が、FATの仲間と製作し応募したのは、大学院の先生の勧めによる。自分で作りたいものを作ってきたFATにとって、コンペに応募する余裕無ければ、またFATのスピリットに合うコンペもなかったように思う。日常に関わる小さな雑貨作りも表現のひとつだと自信を持って製作してきたからこそ、コンペには全く興味がなかったが、学校の単位のひとつだったので、記録的猛暑と戦いながら締め切りに向かって製作をした。■今回のコンペの条件は興味深い。素材は高級な板材ではなく、合板。業界の人は「ゴウハン」と呼ぶ。そのゴウハンをどのように料理するかを競いあう。そんなFATらしいテーマに、負けたくはない思いもあった。そして、試行錯誤の末に何とか完成。目指したのはリラクレーションをコンセプトにした揺れるベッド。毎日が忙しく製作時間は、延べ2日間しかなかった。電車の中などでイメージしながら、集中してイメージを形にした。「途中不可能だ…」途方に暮れ腰が立たなくなる壁も何度かあった。そして完成した。■ものづくりは、体力気力が120%になった時に答えが導きだせるものだと改めて感じた。■ところで、このコンテストは主催者が日本の森林の危機的状況、人間が営む上で考えなければならない環境問題のことなどシリアスな背景のもとに企画したことを会場で知った。ゴウハンは昭和のラワンゴウハンから、現在の間伐財針葉樹ゴウハンに移りゆき、エコを背景にしながらも、野球ができる木造ドーム建築などダイナミックな建築も可能になるなどの技術力も進歩してきた。その上、エコの時代に植えれば循環する再生可能な資源でもある。そんなすばらしい素材のコンペで入賞できたことを大切にしながら、FATのものづくりを一層意味のあるものとして捉えてゆこうと思う。2010.10.25 寺島トオル

 

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