クラフトレーベルFATの
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object of FAT
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by
Kouhei Ichiyama

 
  fragment of materials/素材の欠片たち 15  津久井城山で切り出した「しいの木」の年輪  
     
  謹 賀 新 年  
 

 「Anonymous」。FATの略の真ん中にこの言葉を使い始めてから、もうかれこれ10年以上が経つ。もちろん柳宗理さんやイームズ夫妻からの影響もあるが、それ以上に、偶然出会ったアメリカの俳句集によるところが大きい。その俳句集には「Anonymous」の文字がいくつか並んでいた。「読み人知らず」そんな訳になると思う。素敵な俳句が読み人知らず。ささいなことだがとても心が惹かれる。昨年、宗理さんの弟で園芸家の故宗民さんの書かれた雑草ノヲトの文庫本を手にした。野の花である雑草を集めた図鑑だ。よく見ると実に美しい雑草たちだ。雑草も読み人知らずの短歌も、それらは私達が大好きな雑貨に通ずる。1980年、1990年、2000年、2010年。時代の区切りを私は通過し、FATもまた進んできた。 小さなものひたすら作ってきたFATの活動に、良かったと改めて思う。毎日と向き合える作品を作り続けてきたからこそ「Anonymous」とういう言葉に愛おしさを感じる。時代は不透明だが、扉を開けて歩き出すと、必ず私たちの頭上に広がる空がある。そして、何気なく見つめる流れる雲に、空想し、想像し、それもまた大切な宝物だとふと気づく。足もとを見ると季節が変わるごとに雑草が魅力的な形でたたずんでいる。それもまた素敵な宝物だ。人が作り出すものは足もとにも及ばないかもしれないが、大切に作ったものはきっと何かしらの意味をもたらしてくれるのではないかと、「Anonymous」という言葉は信じる勇気を与えてくれる。
 新年、青空を見つめて、次の時代への区切りを思い描く。心が少しずつまた弾みだす。2010年元旦 寺島トオル

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